私は建築家の渡辺武信、岸和郎、吉村順三、中村好文などから映画の風を受けたのですが、
「吉村順三 住宅作法」から引用
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中村 そういえば、先生は映画がお好きでしたね。たしか監督ではデヴィッド・リーンがお好きだったんじゃありませんか?
吉村-そうそう。「アラビアのロレンス」や「ドクトル・ジバゴ」ね。
中村 「ライアンの娘」っていうのもよかったですね。僕にはアイルランドの石垣の形とか、トレヴァ・ハワードの渋い演技なんかが強烈に印象に残っています。
吉村-それから、あの監督もいいね。あの、イタリアの貴族で、ほら……
中村 ヴィスコンティ。
吉村-そうそう、ルキノ・ヴィスコンティ。あの監督も好きだね。
中村 あの人のインテリアはまたすごいですからね。
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などと、小津安二郎の茶の間の話も出てくるのですが、「アラビアのロレンス」が豊橋の映画祭で上映されると見に行き、作品に劇場が取り込まれた内容に、まるで戦いに参加したようでフラフラになったり、淀川長治さんが紹介する作品を暇があると見ていったのを思い出します。
分かりやすく建物で例えると、建築家が紹介する作品はビルドアップされたスチールのカーポートで、日本で普及しているアルミのカーポートは娯楽映画のようなものです。現状、娯楽映画と監督作品が混じって見分けがつかないのがまずまずい。