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ピアノの階段

私の手帳によると2000年の大晦日、関西国際空港へ行った記録があります。旅行という訳ではなく、大学を卒業して4月から実務についてその年の年の瀬に建物探訪で関空を訪れています。世界を感じた階段を見た記憶があり、今でも鮮明に覚えているのですが、日本では見たことがないプロポーションやカラーでつくられた階段で、世界的な建築家のレンゾ・ピアノが設計した添付のガラスボックスのスチール階段がそれです。日本の一般的な階段より高さが低く抑えられていて巾広で、無駄のないシンプルな階段です。

建物の設計にあたって国際コンペが行われ、海外の設計思想が輸入されたかたちですが、私にはイタリア人建築家のシンプルな階段がピッタリきました。理由は多々あると思いますが、日本には壁や間仕切りでの平面的な規格(グリット)はあります。ですが高さ方向は一定で、規格というかバリエーションが少ないのが現実です。先日わざわざ階段を見に出かけて、改めて考えてみると、ピアノの建築には高さ方向のグリットも存在していることに気づきました。大きな建物を設計する基本だとは思いますが、グリットを決め、組み合わせて、階段の高さは低めになったのかもしれませんが、大きな考えで筋の通った部材として存在しています。構造もデザインとして一から考えられ、大きなコンセプトが建物が実際出来上がるまで成り立っていて清々しい印象です。日本のよくある寿司詰め空港とは違う大きなスケール(空間、空調)の中にある世界を感じる階段です。

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